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上田竜也主演舞台 Birdland 感想レポ [2021/09/13]

上田くん主演の舞台 Birdland 9/13日の夜公演に行ってきました。

※個人的な解釈です。記憶が曖昧なのでセリフとか正確じゃない部分があるかも。

 

stage.parco.jp

 

ざっくりと感想

簡単に言葉では表せない重い感情が残る舞台でした。頂点に立ち富も名声もすべて手に入れた男が、自分を消費し、消費され、壊れていく物語。劇中の彼はポールであって上田くんではないけど、本当に壊れて消えてしまいそうで怖くなったしカーテンコール時の上田くんがいつもの上田くんで安心しました。二回目のカテコでお辞儀して顔上げたあとちょっと照れた感じで襟足さわってたのかわいすぎて、あんなにかわいい推しを至近距離で見れることなんて今後ないだろうから崩れ落ちそうになるのを必死にこらえて目に焼き付けた。ありがとう世界。

 

ポールはまじでクソでクズでゴミなんだけど、クソさが気にならなくなるくらいメンタルえぐられて「これ以上苦しませないで...」ってなりました。周りの人間を傷付け苦しめるけど、悪意があるというよりも、周りとは感覚や価値観がずれてしまっていてそれに気付かず無意識に周りを振り回してしまう、言うなれば純粋なところがある人なんだろうな。純粋であるがゆえに時にその行動がとても残酷になってしまう、そんな気がしました。

 

とにかくみなさんの演技がすばらしくて、あまり舞台観劇の経験がないので詳しいことは分からないけどとても濃い二時間でした。セットや演出はそんなに派手じゃなくて、その分一人一人の演技にすごく引き込まれてしまってしんどかったです。パルコ劇場はかなり狭いので感情がよりダイレクトに伝わってきた部分もあるのかな。私は真ん中らへんの席で始まる前はもう少し前の方が良かったなって思ってたけど、正直最前とかじゃなくて良かった気がします。あのしんどさを間近で見るのは多分耐えられない。オペラグラスも一応持って行ったんだけど使えるほどの精神的余裕はありませんでした。(というか演技とはいえ推しの苦しんでる表情を双眼鏡を通してはっきり見る勇気がなかったです。)

 

 

⚠ここから先ネタバレ含みます⚠

 

一応簡単なあらすじ

世界的な人気のあるロックスター・ポールは、ワールドツアー最後の一週間を迎えていた。モスクワでのライブを終えた夜、酔ったポールは親友でありバンドのギタリストであるジョニーの恋人、マーニーと関係を持ってしまう。ポールはこのことをジョニーに話すと言い、マーニーは必死に止めるがポールは親友に嘘をつくことはできないと言う。思い詰めたマーニーは、ホテルの屋上から飛び降りてしまう____。

 

 

以下個人的に心に残ったシーン。

(出てきた感情そのまま書いてるのでまとまってないけど許して)

「自分が思っているよりも多くの人が自分が誰だか知っていて、自分のことを見ている」「そのうち自分が誰だか分からなくなってくるんだ。手足が勝手に動いて、自分じゃない誰かが喋っている。」というポールのセリフ。スターとして消費されていくことへの苦悩が感じられた瞬間だった。
雑誌の取材を受けているシーンでも、質問に全て「うん、いいね」でしか答えない、雑誌用の簡単な二択の質問にすら答えられない。
別のシーンで「俺の世界の見方を変えてくれた人達がいる。その人の音楽やアートや映画で、俺は物事を恐れなくなった。そういう人に会いに行くためなら、どんなに遠くたって行ってしまうもんだろう。」と言っていて、かつてはポールも同じ消費する側だったんだな、と実感しその変化に心が痛くなった。

 

・ポールが幻覚を見て「こんなにたくさんの人がいるのに 見えないのか...?」みたいなこと言ってるシーン。客席にぼんやり光が当たったのがめちゃめちゃぞわっとした。「消費者」が自分たちだって自覚させられた感じ。

 

・最後の日、ステージに立つ前に父親が言った「お前はずっと変わらないな」という言葉。こんなにも変わってしまってもう昔のポールではないのに、父親から見たらずっと変わらない息子で、ポールが父親の前では「ずっと変わらない息子」を演じているんだなあ、と切なくなった。
ちなみに父親には借金があり、ポールが代わりに払うと言うのを口では断りつつ結局受け取っているのを見て、ああこの人もある意味ポールを消費する人間なんだな、と思ってしまった。
ポールは前にマーニーの両親と話したときに自分の死んだ母親のことを「死ぬなんてクソだ」と言っていたのだが、もしかしたら母親の死の原因は父親なのかもしれない。この両親との見えない歪んだ関係が、ポールが満たされない思いを抱える原因のひとつなのではないかと思う。

 

・精神的に追い詰められ人間不信になり周りの人を傷付けていったポールは、ジョニー目的で近付いてきた14歳の少女と関係を持ったことが警察にバレ、15億もの借金を背負うことになる。
この事件についてマネージャーと話しているシーン、マネージャーの「ジョニーに嵌められたんじゃないのか」に対してポールはとっさに「あいつはそんなことしない」と否定する。まともに話ができないほど情緒不安定で、少し前に「もうお前の顔は見たくない」とジョニーに言われているのにもかかわらず、彼に嵌められたのではないかと言われてとっさに否定してしまうポールがとても可哀そうで切なくて苦しかった。

 

抱えきれない罪悪感と自己嫌悪に追い込まれてどんどん狂っていくポールのことが理解はできないけど嫌いになれない。誰か助けてあげてほしいと思うけど、誰も彼を救うことはできないだろうな、と感じた。

 

結末は解釈が分かれると思う。
ポールが立っているところだけが白くて、その周りは真っ暗闇で、飛び降り自殺したマーニーの霊(虚像?)と会話する。「落ちていくってどんな感じ?」「不思議な感じ。一瞬、全ての感覚が研ぎ澄まされて、地球の大きさとかカーブが分かるの。」「死ぬってどんな感じ?」「とても寒くて。薄暗い。全てが恋しい。」

ここの落ちていく感覚の表現がどこかポジティブなイメージのある言葉になっているのがなぜかとても印象に残った。

 

どうすればいいか分からない、誰も自分のことを知らない場所へ行きたい、全て投げ出して楽になりたい、けど死ぬのは怖い__。ポールの心情は多分こんな感じ。

 

そして自分は死なない、と言いながら(もっとセリフ長かったけど覚えてない)その暗闇に足を踏み出して幕が閉じる。母親の死に対して「死ぬなんてクソだ」と言っていたのに死が最後の救いになってしまったのかな。

言葉通り死ななかったのか、死んでしまったのかは私たち観客の解釈次第だと思います。

 

 

そんなこんなでとても重くて色々刺さる舞台でした。しんどかったけどちゃんと楽しめたし出来ることならもう一回観たい。一日分しかチケット取ってなかった過去の自分を呪います。それにしても上田くんずっと出ずっぱりでセリフの量がすごかった。これを日によっては一日二公演、10月末までやるんだもんな...。コロナで先が見えない状況だけど、無事に完走できますように。